悪質なボット攻撃からインフラストラクチャを保護し、防御ボット セキュリティ管理によりサイバーセキュリティ体制を強化します。
ボットとは、Webサイト、アプリケーション、システム上で、有益なタスクと悪質なタスクの両方を含む自動化されたタスクを実行するソフトウェア アプリケーションやスクリプトのことです。今日のデジタル環境でデータや顧客アカウントを保護し、レジリエンスを維持するには、増大するボット攻撃の脅威を理解し、ボット セキュリティを実装することが不可欠です。
ボット セキュリティとは、オンライン コマースを促進したり、AlexaやSiriのようにパーソナル アシスタントとして機能したり、Webサイトの顧客サービスを自動化するチャットボットとして機能したりする有益なボットには影響を与えずに、悪質なボットから保護し、オンライン リソースの整合性と可用性を確保することです。
悪質なボットは、データを侵害したり、サービスを中断したり、さまざまな方法でビジネスに損害を与えたりすることで、デジタル エコシステムに重大な脅威をもたらします。
ボットは、システムに侵入し、個人情報、財務記録、知的財産などの機密性の高い情報を抜き出すようにプログラムできるため、認証情報を利用した攻撃に最もよく使用されるデジタル ツールでもあります。またボットは、データベースやストレージ システム内のデータを操作、改ざんできるため、経済的損失を引き起こしたり、記録の正確さを損なったりする可能性もあります。
ボットは、オンライン サービスやシステムを妨害するためにも使用されます。犯罪者が、接続された複数のデバイスから多数のボットに対して、Webサイト、サーバ、ネットワークに分散型サービス拒否(DDoS)攻撃で過剰な負荷をかけるよう命令することで、対象ユーザーはサービスにアクセスできなくなります。
さらに、ボット活動によって、ブランドの評判を傷つけたり、在庫を操作したり、金融詐欺につながるアカウント乗っ取り(ATO)を可能にしたりすることで、企業の経済的成功に重大な損害を与える可能性もあります。
サイバーセキュリティの観点で見ると、ボットには主に、悪質なボットと防御ボットの2つの種類があります。
サイバー犯罪者は、工夫を凝らし複雑で見つかりにくいさまざまな攻撃を開始するように悪質なボットをプログラムして、Web資産やアプリケーション全体の攻撃対象を悪用しようとします。これらのボットは人間の介入なしで動作するように設計されており、多くの場合、マルウェアの拡散、DDoS攻撃の実行、機密情報の盗難、詐欺行為の準備といったタスクを実行します。悪質なボットはネットワークに侵入したり、データの整合性を侵害したり、サービスを中断したりすることで、重大なサイバーセキュリティの脅威を引き起こします。その動作は、ソフトウェアの脆弱性の悪用からソーシャル エンジニアリング攻撃の実行まで多岐にわたりますが、最終的な目標は、損害や経済的損失を引き起こすこと、あるいはシステムや機密情報への不正アクセスを可能にすることです。
防御ボット管理とは、コンピュータ システム、ネットワーク、Webプラットフォームをさまざまなセキュリティの脅威や攻撃から保護するために設計された自動のプログラムとメカニズムを指します。このようなボットは、デジタル資産を保護し、情報の整合性、機密性、可用性を確保するために、さまざまな方法で動作します。
こうした自動防御には、シグネチャ検出、行動分析、ヒューリスティックを使用して既知のマルウェアに関連するパターンと動作を識別するウイルス対策ボットがあります。防御ボットは、ファイアウォール保護の一部としても使用され、データ パケットを分析し、事前定義されたセキュリティ ルールを適用することで、送受信されるネットワーク トラフィックを監視し、トラフィックを許可するかブロックするかを決定します。特にWeb Application Firewall(WAF)には行動分析が組み込まれており、機械学習による自動保護機能を提供する高度なボット管理と統合できます。
侵入検知・防御システム(IDPS)も防御ボットを採用しており、特定のIPアドレスのブロック、ファイアウォール ルールの変更、セキュリティ担当者への警告といった対応を自動化して、脅威インテリジェンスを活用することで、セキュリティ インシデントをプロアクティブに特定して防止します。また防御ボットは、DDoS攻撃に関連するパターンを特定し、サービスの可用性を維持するための対策を実装することにより、ボットネットに関連する悪質なトラフィックを選別して迂回させることもできます。これらのアクションには、ファイアウォール ルールを動的に更新して攻撃元からのトラフィックをブロックし、悪質なボットがネットワークにさらにアクセスできないようにすることなども含まれます。
ボット攻撃はさまざまな形で行われ、さまざまな種類の組織を標的にします。
ボット攻撃は、組織のネットワークに重大な悪影響を及ぼし、事業運営に重大な損害を与えかねません。
ボットはWebサイト、データベース、APIから体系的にデータを収集するようにプログラムできるため、データ盗難はボット攻撃で起こり得る結果の中で最も深刻なものの1つです。このデータには知的財産、企業秘密、その他の専有情報などが含まれ、競争上の優位性の喪失やブランドの評判の低下につながる可能性があります。顧客情報の盗難は、データ保護規制の遵守を損ない、罰金や法的措置につながりかねません。
ボット攻撃はサービスを中断することで組織に重大な損害を与え、経済的損失や顧客の信頼の低下につながります。ボット主導の攻撃が緩和されない場合の深刻な結果の1つがDDoSであり、犯罪者がボットネットに指示してネットワーク リソースに過剰な負荷をかけ、サービスの中断を引き起こします。
またサービスの中断は、クレデンシャル スタッフィングやアカウント乗っ取り攻撃によっても発生する可能性があり、その場合、正当な顧客がアカウントからロックアウトされたり、取引できなくなったりします。顧客が自分のアカウントにアクセスできないだけでなく、犯罪者が侵害されたアカウントを使用して不正取引を行う場合もあります。
悪質なボット攻撃から保護するためにセキュリティ ボット対策を設定するには、いくつかの重要な手順があります。
徹底した分析を行い、システムや業界に特有の潜在的なボットの脅威を特定します。IP分析などの手法を使用して、送信元IPアドレスに基づいて受信トラフィックの特性を調べます。これは、既知の悪質なIPアドレスや不審な動作に関連するパターンを特定したり、ボット トラフィックと正当なユーザーの行動を区別したりするのに役立ちます。ボットの活動に関連する既知の悪質なIPアドレスの拒否リストを管理します。
IPアドレスの地理的位置を分析して異常を検出します。通常とは異なる地域からトラフィックが突然、流入した場合は、ボットネットの存在を示している可能性があります。さらに、攻撃者が検出を回避するために、キャンペーンの分散インフラストラクチャの構築に多くの自律システム番号(ASN)が使用されていることが知られています。ユーザーエージェント分析を通じて、ユーザーエージェントのシグネチャを調べて、リクエストを行ったクライアントの種類を特定します。ボットは多くの場合、通常のパターンから逸脱した汎用ユーザーエージェントを使用したり、これを変更して使用したりするため、正当なユーザーと区別できます。
行動分析を使用して受信トラフィックを評価し、ボットの活動を示す可能性のあるパターンや異常を特定します。この方法は、人間の行動を模倣しようとする高度なボットに対して特に効果的です。ボットの多くは、正当なユーザーと比較してセッションが短く、バリエーションが少ない場合や、Webサイトやアプリケーションとのやり取りで、反復的、高速、または人間的でないパターンを示す場合があるため、ユーザー セッションの継続時間とフローを調べます。一部の高度な行動分析メカニズムは、マウスの動きとクリックを追跡して、人間の操作と自動化された操作を区別します。
WAFは、Webアプリケーションとインターネットの間の保護障壁として機能し、データとWebアプリケーションをさまざまなサイバー脅威から保護し、アプリケーションからのデータの不正流出を防止します。WAFには、悪質なボット トラフィックを検出して軽減し、Webスクレイピング、クレデンシャル スタッフィング、自動攻撃などの悪質な活動を防止する機能があります。またWAFには、定義された時間枠内で特定のIPアドレスからのリクエスト数を制限する、レート制限メカニズムやスロットル メカニズムもあり、DDoS攻撃の影響の軽減に役立ちます。さらに、WAFは、SQLインジェクション、クロスサイト スクリプティング(XSS)、クロスサイト リクエスト フォージェリ(CSRF)など、他の悪質な自動攻撃からWebアプリケーションやシステムを保護することもできます。
WAFの導入にはいくつかの方法があります。すべては、アプリケーションの導入場所、必要なサービス、管理方法、アーキテクチャに求める柔軟性とパフォーマンスのレベルによって異なります。WAFは、攻撃者が悪質なキャンペーンの手段をどのように変えようと、有効性とレジリエンスを維持できる特殊なボット管理と統合することもできます。適切なWAFと導入モードを選択するためのガイドについては、こちらをご覧ください。
セキュリティは、攻撃者のツール、手法、意図に関係なく、攻撃者が対策を回避しようとして攻撃手法を改良するのに適応する必要があり、これをログイン プロンプト、CAPTCHA、MFAでユーザーに不満を持たせずに実現しなければなりません。これには、Webアプリケーション、モバイル アプリケーション、APIインターフェースのオムニチャネル保護、リアルタイムの脅威インテリジェンス、AIによるレトロスペクティブ分析が含まれます。
複数のクラウドやアーキテクチャにわたる可視性と、耐久性のある難読化テレメトリを、集合的な防御ネットワークや高度に学習した機械学習モデルと組み合わせることで、ボット、自動攻撃、不正行為を検出して阻止する比類ない検出精度が得られます。これにより、攻撃者が攻撃手法を改良し、対策に適応しても、緩和策の効果を完全に維持し、最も高度なサイバー犯罪者や国家的攻撃者であっても、正当な顧客の不満を増すことなく阻止することができます。
効果的なボット セキュリティを維持するためのベスト プラクティス ガイドラインを以下にご紹介します。
悪質なボット攻撃がますます巧妙化、悪質化、危険化する中、ボット セキュリティも常に進化し、脅威とその緩和策の進化が止まることはないという認識の下で、サイバー犯罪者とセキュリティ チームの間で拡大し続ける熾烈な戦いにおいてレジリエンスが維持されています。
ボットの脅威を軽減する最善の方法は、変化する攻撃ベクトルに対処し、脅威が実行される前に脆弱性と脅威を特定して対応できるように、多層セキュリティ アプローチを採用することです。組織がボットの影響に対処できるようプロアクティブに備えることで、知的財産、顧客データ、重要なサービスを自動攻撃から保護することができます。
F5 Distributed Cloud Bot Defenseは、Webアプリケーション、モバイル アプリケーション、APIインターフェイスのオムニチャネル保護など、リアルタイムの監視とインテリジェンスを提供して、組織を自動攻撃から保護します。またDistributed Cloud Bot Defenseは、リアルタイムの脅威インテリジェンス、AIを活用したレトロスペクティブ分析、Security Operations Center(SOC)の継続的な監視により、最先端のサイバー攻撃を阻止するレジリエンスを備えたボット緩和対策を提供します。F5のソリューションは、攻撃者がどのように手段を変えても、攻撃対象がWebアプリケーションからAPIに変わっても、あるいはテレメトリのなりすましやヒューマンCAPTCHAソルバーを使用して自動化対策を回避しようとしても、その有効性を失いません。
F5はまた、高度なオンライン セキュリティのための多層的なDDoS対策も提供しています。これは、ネットワーク、プロトコル、アプリケーションを標的とした大規模攻撃をリアルタイムで検知して軽減する、クラウド提供型のマネージド サービスで、オンプレミスのハードウェア、ソフトウェア、ハイブリッド ソリューションでも同じ保護機能が提供されます。F5 Distributed Cloud DDoS Mitigationは、レイヤ3とレイヤ4のアプリケーション固有のボリューム型攻撃や高度なレイヤ7攻撃を、ネットワーク インフラストラクチャやアプリケーションに到達する前に防御します。
ソリューションの概要
ボットの検出とセキュリティ:自動化された攻撃を阻止する ›