通信事業者のエネルギー使用状況は、かつてないほど詳細に調査されています。
地政学的な緊張と気候変動への懸念が重なり、事業者にとって、ネットワーク コアからデータ センタ、さらにその先まで、どのような活動も、それがどこで行われていても、その効率化を求める圧力が強まっています。
Telecoms.comの2022年の気候変動対策調査レポートによると、エネルギー消費量の削減は、現在、通信事業者の最も喫緊の経営課題に位置付けられています(回答者の64%)。
世界中で、意思決定者が混乱とコストの増大を最小限に抑えながら効率化する方法を模索する中、サービスを統合し、最新の導入モデルに置き換えるという考え方は業界全体で明らかに強まっています。
実際、Heavy Readingがネットワーク戦略担当者を対象に行った2023年5Gグローバル調査でも、消費電力削減のアプローチとして最も多い回答は、できるだけ多くの機能を共通の1つのインフラストラクチャ プラットフォームに移行することでした(52%)。これに続く回答は、エッジ コンピューティングによりインフラストラクチャのフットプリントを減らし、エネルギー効率を高めること(45%)、各機能とベンダーを統合し、エネルギー管理とコストの効率化を厳格に行うこと(40%)でした。
これらの調査結果に基づき、Heavy Readingの主席アナリストであるGabriel Brown氏は、「分散化とマルチベンダーは、本質として何らかの非効率性をもたらすため、その解決法を考えることが明らかに重要だ」と述べています。さらに、コア ワークロードを共通の1つのクラウド プラットフォームに統合することは、「5Gモバイル コアのエネルギー消費量を削減するために事業者ができる最も重要な動き」だと付け加えています。ただし、回答全体を見ると、事業者が「電力削減戦略では複数のアプローチを組み合わせるだろう」ということがわかります。
最近行われた別の調査として、Capgemini Research Instituteレポート『ネットワークのクラウドへの移行:明らかなメリット』からは、通信事業者のネットワーク容量の約半分が、今後、3~5年間にクラウドネイティブ化する予定であることがわかります。
さらにこのレポートは、今後5年間に事業者がクラウド トランスフォーメーションに年間2億600万ドルを投資する予定であることを示しています。クラウドネイティブへの移行に早くから取り組んでいる組織は、経済性と環境の持続可能性という点で最大限の価値を実現できる可能性が高いでしょう。環境の持続可能性については、この調査は、このような包括的な通信事業者向けクラウドが、今後3~5年間で温室効果ガス排出量を5%削減できる見込みであることを示しています。さらに、通信事業者向けクラウドは、設備排出量が少ないため(物理的なハードウェア フットプリントの削減、消費電力の抑制、オンデマンドによるネットワークの自動スケーリング、AIや機械学習を使用したモバイル タワーの消費電力の管理など)、持続可能性を高めます。
だからこそ、クラウドネイティブ機能(CNF)が果たす役割はさらに大きくなっていきます。少なくとも、大きくなっていくべきです。
CNFは、従来は物理デバイスで行われていた機能、またはアプリケーションを、ソフトウェアで実装します。
このテクノロジは、ワークロードをクラウドネイティブ アーキテクチャに移行することを目的として開発されたもので、通信事業者が抱えていた従来の「重い」仮想化ソフトウェア層を排除し、効率を最大化するために運用の自動化とオーケストレーションを行うことができます。さらにこれらすべてに加え、ネットワークを拡張することもできます。
また、複数の機能を1つのプラットフォームに組み合わせ、サーバーの容量、CPUサイクル、エネルギー消費量を削減しながら、パフォーマンスを大幅に改善できます。例えば、5Gネットワークを運用している場合、既存のネットワークの機能を、同じ機能のクラウドネイティブ バージョンに移行できます。
ここで重要なことは、CNFを統合することで、1つのコマンド(またはAPI呼び出し)で、ドメイン ネーム サーバー(DNS)、ゲートウェイ/インターネット ファイアウォール(GiFW)、キャリアグレード ネットワーク アドレス変換(CGNAT)など、複数のネットワーク機能をアクティブ化できることです。これにより、必要なときにいつでも「すぐに」ワークロードを拡大/縮小できるなど、まったく新しいレベルの柔軟性を獲得できます。例えば、大きなスポーツ イベントがあるとき、CNFを使用してコンピューティングとネットワークの容量をすぐに増設し、トーナメントが終了したら撤去することができます。専用のハードウェアで機能を実行していた従来のアプローチなら、セットアップに数か月はかかるでしょう。
一方、統合されたCNFプラットフォームは必要に応じてすぐに起動し、終了することができ、消費電力は常に最小限に抑えられます。テレビやスマートフォンが使わないときは省エネ モードに切り替わるのと原理は同じです。
F5では、コントロール プレーンとデータ プレーンを完全に解体し、真のクラウドネイティブ機能を一から構築しました。現在、データ プレーンの拡張や、重要なアプリケーション/機能(CGNATなど)の起動と終了を数秒で実行できます。同等のCNF隣接ソリューションでは、約15分かかります。仮想化された「ラッパー」は、真のCNFよりも効率性が低く、さまざまな機能を異なるサーバーに配置する必要があります。
また、F5は、Edge Firewall、CGNAT、DNS、Policy Enforcerなど、BIG-IPハードウェアおよび仮想ネットワーク機能に使用するソフトウェア セキュリティ機能のリファクタリング バージョンをCNFフォーム ファクタに導入しています。この互換性により、通信事業者は、クラウドネイティブ アーキテクチャへの移行が有益な場合には、初期投資を保護しながら、シームレスに移行することができます。
さらに、高い柔軟性を活かし、(商用オフザシェルフ ハードウェアではなく)F5 CNFに最適化されたハードウェアで一連のCNFを実行することができます。選択した機能をハードウェアにオフロードすることで、パフォーマンスを大幅に向上できます。また、クラウドネイティブの特性と、F5ハードウェア アプライアンスの高いパフォーマンスの2つを最高の状態で活用することができます。選択が重要であることはこれまでと変わりません。より持続可能な運用を実現するための万能なアプローチはありません。
今後、エネルギー価格が下がっても、統合が利益を生む可能性は高いでしょう。合理化されたソリューションは、パフォーマンスと信頼性を高めるだけでなく、コストも削減します。統合によって複雑さが軽減されれば、通信事業者は、5G CNFの柔軟性、拡張性、ポータビリティのメリットを最大限に活用できます。これらは、専用ハードウェアや仮想ネットワーク機能(VNF)で同じ機能を運用する場合と比べて、大きなメリットとなります。
これらすべてが単なる論理上の技術の話ではないことが、大きな励みになります。統合の最前線で、通信事業者のいくつかの動きが影響力を発揮し始めています。
例えば、楽天モバイルは、5Gデータ プレーンのCNFを統合することで、中央処理装置(CPU)の使用率を60%以上削減し、さらにCPUのホップ数とレイテンシも低減しました。この通信事業者の革新的なアーキテクチャは、リソースの消費を最適化し、合理化されたネットワーク構造により、新サービスやソフトウェア アップデートを簡単に配布できるようになりました。この事例は、何が可能かを鮮やかに示しており、多くの通信事業者が後に続くことが予測されています。
またF5は、N6-LANのネットワーク機能を統合することで、CapExを60%削減し、運用コストも削減できると予測しています。さらに当社は、高密度の64コア高性能チップとF5 CNFを組み合わせるテストを実施しています。これは、実際にパフォーマンスを高めながら、データ センタの電力消費を抑え、冷却の必要性も軽減できることを意味します。
まだ始まったばかりですが、通信事業者の統合の動きと、個別のユース ケースに対応したF5の関連イノベーションが躍進を遂げることを期待しています。この分野から目が離せません。
クラウドネイティブ統合の詳細については、2月27日~3月2日にバルセロナで開催されるMobile World CongressのF5のブースにぜひ足をお運びください(ホール5、C60)