エクスペリエンス(経験や体験)。英語の多くの言葉がそうであるように、エクスペリエンスという言葉も、文脈によってさまざまな意味を持ちます。例えば、「ソフトウェア開発のエクスペリエンス(経験)がある」というのは、「アプリケーションを作成するためのコードを書いたことがある」という意味に取られます。
しかし私には、指を骨折したり、住宅ローンを組んだり、水泳をしたり、他の開発者が書いたソフトウェアを使ったりした経験もあります。このような経験は必ずしも専門知識につながるものではなく、単に私がある活動に従事したことがあり、同じことをした他の人々に共感できることを表します。また、良いことも悪いことも含めて、このような経験についての私の考えを共有することもできます。
テクノロジ企業が「エクスペリエンス」という言葉を使うとき、それは一般的にユーザーが自社の製品やサービスを利用する方法に関連しています。しかし多くの場合、その体験の焦点は「うまくいったかどうか」に集約されます。
例えば、私はテレビ ゲームが好きで、ヘッドフォンを使う必要があります。これまで多くのヘッドフォンを使ってきましたが、そのほとんどが明らかに眼鏡をかけている人のために設計されたものではありませんでした。ほとんどの着け心地が悪く、その使用のエクスペリエンス(体験)は気持ちの良いものではありませんでした。眼鏡をかけている人のことを考えてヘッドフォンを設計している会社に出会えたことで、はるかに良い体験ができましたし、ブランドに対する忠誠心や支持の気持ちが芽生えました。
どのヘッドフォンも正常に機能し、アップタイムは100%でした。しかし、あるブランドが他のブランドよりも際立っていたのは、アップタイムだけでなく、製品を長時間着用したときのエクスペリエンス(体験)を重視していたからです。言うまでもなく、私は生涯の顧客です。また買いたいと思います。5つ星の製品です。
このようにカスタマ エクスペリエンスを重視することは、デジタル トランスフォーメーションの取り組みを進める上で、すべての企業が注目する必要のあることです。正常に動作することがアプリケーションやデバイスの(唯一の)目標であってはなりません。
今日のデジタル アズ デフォルトの世界では、ほぼ常時のアップタイムが前提となっています。アプリケーションやデバイスの可用性を問題にするべきではありません。問題にするべきなのは、そのアプリケーションやデバイスでどのようなエクスペリエンスができるかということです。
カスタマ エクスペリエンスを従来のアップタイムに基づいて評価することは、勝ち目のない戦略です。常にたくさんのアプリケーションが提供されていますが、その多くが削除されてしまうのは、しつこい広告や通知のためではなく、単に「わかりにくい」ためなのです。アプリケーションが利用可能であっても、ナビゲーションの選択肢がわかりにくかったり、複雑なプロセスのガイダンスが不明瞭だったりすると、結果的にエクスペリエンスは悪くなります。アプリケーションのインターフェイスが、モバイルでも大型ディスプレイでも同じように使えるようになっていないと、質の低いエクスペリエンスになってしまいます。サービスや製品間で一貫性が保たれていない場合も、質の低いエクスペリエンスになります。
また、主に機械、スクリプト、その他のサービスによってアクセスされるアプリケーションなのでエクスペリエンスは重要でないという考えに陥ってはいけません。人間が介在しているのです。つまり、アプリケーションとAPI間のインターフェイスのメカニズムを構築する必要のある開発者です。ドキュメントが不十分なAPIや、一貫性のないAPIでは、確実にフラストレーションが溜まり、努力を放棄することにもなるため、開発者のエクスペリエンスは重要です。APIのアップタイムはエクスペリエンスの終わりではなく、始まりなのです。
APIやサービスを提供する場合でも、製品やプロセスのガイダンスを提供する場合でも、人間はあなたが提供するものを体験(エクスペリエンス)することになります。エクスペリエンスの定義の一つに、次のように人間の反応に基づくものがあります。
(名詞)誰かに印象を残すイベントやできごと
だからこそ、私たちはアップタイムを重視しやすいのかもしれません。アップタイムは測定して追跡できます。印象は人間の反応であり、デフォルトのデジタル信号はありません。私たちは積極的にヒューマン ファクターを理解しようとしなければなりません。幸いなことに、印象の良し悪しを理解するのに役立つデジタル信号があります。
エンゲージメントの長さ、日次および月次のアクティビティ率、プロセスの完了率などの指標から、全般的なインサイトを得ることができます。例えば、複雑なオンボーディングや登録は、ユーザーがアプリケーションを削除する最大の理由として挙げられます。インストルメンテーションによって、そのプロセスに関するインサイトを提供し、不満の原因を明らかにすることができます。ほとんどのユーザーがステップ2でプロセスを放棄している場合は、そのステップを検証し、何が障害になっているのかを判断する必要があります。
ユーザーがどのようにテクノロジに関わっているかを理解するには、インストルメンテーションが重要です。これは、消費者向けに設計されたユーザー インターフェイスにも、開発者やエンジニアが使用するために設計されたインターフェイスやAPIにも当てはまります。インターフェイスのインストルメンテーションを行うことで、設計者や開発者は良い印象を与えるために必要なインサイトを得ることができます。
これらの機能は常に進化しています。「デジタル分析」により、ユーザーがアプリケーションやデバイスをどのように操作しているかをより詳しく理解することができます。
デジタル ボディ ランゲージを利用して(ボットなどの)脅威を検出し、リスクを評価することはよくありますが、このようなシグナルの可能性を探り、それをアプリケーションやデバイスとのエンゲージメントに応用することは、まだ始まったばかりです。
今年の「アプリケーション戦略の状況」調査では、あらゆる業界のデジタル トランスフォーメーションの取り組みにおいて、カスタマ エクスペリエンスが引き続き重視されていることがわかりました。これは驚くことではありません。デジタル アズ デフォルトの世界では、企業がお客様と最初に接するときも、その後もほぼ毎回、人間によるカスタマ サービスに代わってテクノロジが利用されるようになるのです。
CXは、開発ライフサイクルの中でますます重要な役割を果たしています。これは、誰かに良い印象を残すことに焦点を当てた原則です。そのため、単なるアップタイムの指標ではなく、テクノロジに対する人間ファーストのアプローチなのです。