みなさん、こんにちは。
既に皆様ご存じかと思いますが、今年1月にEdgeクラウド基盤を提供するVolterra社をF5は買収しました。その後、社内外の様々な手続きを経て、先日日本でも報道機関向けの戦略説明会を開催致しました。当ブログでは、各種メディア様の記事をご紹介しながらその内容を総括したいと思います。
当然ながらこのトレンドが加速しているのは理由があります。一言でいうと、「データ駆動型ビジネスの進展」が背景にあります。この傾向により、アプリ・システムの分散化が進み、それに対応するためにEdge基盤を活用したインフラの構築が必要となっているのです。もう少し具体的に見ていきましょう。
これらの条件が揃うことにより、ざっくり以下のような流れが実現できます。
また、以前のブログでもご紹介した通り、弊社の年次エンドユーザレポートであるアプリケーション戦略レポートの2021年度版においてもEdgeのユースケースを5種類挙げ、回答者の皆様からはIoTを中心とした高い関心度合いを示して頂いております。このように、調査会社、テクノロジの発展による情勢の変化、そしてそれに呼応するユーザ企業の期待値などが絡み合いながら、Edge基盤技術への期待と少しずつ、しかし確実に進む現場で技術調査や検証などが進み始めている、それが2021年現在のEdgeを取り巻く日本の現状と言えます。
上記は一般論ですが、分かりやすい例を挙げて具体的に詳細を見ていきたいと思います。
まずはIoT技術を活用した監視システムを挙げてみましょう。ご周知の通り、監視システムは監視カメラで記録した画像・動画データを監視システムに集約し、記録、解析などを行います。従来であれば重い画像や動画データを中央システムまで転送していたのを、例えば部分的な解析処理を監視カメラが配備されている拠点内で実行できるとどうなるでしょうか。画像や動画データ全てを集中処理する中央の拠点(大抵はデータセンタやパブリッククラウドと想定されますが)に転送するのに比べて、一定の処理を監視拠点で行い、解析結果のみ中央拠点に送り、送信するデータ量の削減、遅延などのリスク低減も期待できます。このように、従来の中央集権を前提とした処理と比較して活用できるケースは多様な場面で考えられるわけです。
上記のIoTユースケースはマイナビ様の記事でも触れられていますが、今回の戦略発表会では他にも2種類のユースケースをご紹介しました。
2つ目のユースケースは通信事業者向けMEC基盤向けとなります。Multi access Edge computingとは、ETSI(欧州電気通信標準化機構)が標準化すすめる通信事業者の基盤において、ユーザに近いところにエッジサーバーを設置し、そこでアプリケーションとの通信を行うことで、低遅延な通信を実現する技術)になります。多くの通信事業者様においては、MECをこれからは活用するに当たり、日本全国の各都道府県に最低ひとつ以上構築する算段となるようです。この数だけEdge基盤であるMECの拠点が構築されるということは、当然その多拠点に配備される局舎全てをどのように管理していくのか、MEC拠点同士の通信、セキュリティ、そして既存の自社インフラとどのように連携させていくのか、などが既に課題として挙がっております。管理性の分かりやすい例を挙げますと、フラットなネットワークであるKubernetesベースの世界では階層的な管理や制御(routing tableを分割する、といったことが出来ない)などの要件は規模が大きくなればなるほど深刻な課題となり得ます。ここでVolterraからご提供できるソリューションとして、
などが挙げられます。
最後のユースケースは迅速・簡単かつセキュアにマルチクラウド接続を構築するものになります。こちらはアスキー様の記事でもご紹介頂いております。従来のマルチクラウド環境の接続ソリューションにおいて問題になりやすかったのは、L3からL7まで一貫して接続性を提供するソリューションがなかなか無かった、またクラウドごとに異なるコンソールでのコンフィグやセキュリティ設定が煩雑、などの課題がありました。そこでVolterraをご活用頂くことで、L3のSRC/DST/Portから、L7のアプリレベルのAPIアクセスの可視化やセキュリティまで一貫して提供し、しかも設定はVoltConsoleから一元化することが可能となります。このマルチクラウド接続は本年のInterop TokyoのShowNet基盤でもご採用いただき、ネットワーク基盤のマルチクラウド接続を迅速に実現しました。しかも、ご存知の通りVolterraはSaaS接続であるため、通常ShowNetの構築作業は会場である千葉県幕張メッセでオンサイトで行うことが一般的ですが、弊社のVolterraソリューションは全てリモートで構築を全て完了することができました。新常態に適応できる、クラウドベースのソリューションならではの接続ソリューションの強みが発揮された好例と言えるかと思います。このInterop Tokyoの設定詳細はこちらのブログでも解説しておりますので是非御覧ください。
今回のブログでは現時点での弊社から見える市場情勢と代表的なユースケースをご紹介しました。しかし、当然弊社F5とVolterra社が一緒になったことにより、これからさらなるシナジーをユーザ企業様にご提供していくべく、現在社内でも様々な準備が進んでおります。まだお話できることは少ないのですが、ひとつだけ言えるのはお客様のアプリケーション基盤の可用性、安定性、セキュリティを一貫して提供するインフラ基盤の選択肢が更に広がり、データセンタ、パブリッククラウドなどに加え、Edge基盤においても弊社のもつ全てのアプリケーショ基盤技術がシームレスにご支援できる準備が整った、ということです。製品レベルの今後の計画などは、またご紹介できるタイミングで情報発信を継続していきたいと考えております。これからも皆様のアプリケーション基盤に貢献してまいります、F5をどうぞよろしくお願いします!