Office 365へのアクセスで発生する膨大なトラフィックを、どのように処理するか。
豊田佐吉が発明した自動織機を原点に、繊維機械や自動車、産業車両、エレクトロニクス等、幅広い事業分野で優れた製品・技術を生み出し続けている株式会社 豊田自動織機(以下、豊田自動織機)。ここではMicrosoft Office 365(以下、Office 365)の導入に伴い、社内ネットワークの構成が部分的に変更されている。BIG-IPのプロキシ負荷分散の機能を活用し、Office 365とその他のインターネットサイトへのトラフィックを分離することで、大規模な機器追加やリプレースを行うことなくトラフィック増大に対応したのだ。これによって常時安定したパフォーマンスを確保。また既存のネットワーク機器を増強して帯域を確保する方法に比べ、大幅なコスト削減も可能になった。
BIG-IP でOffice 365 へのトラフィックを分離した結果、常時安定したパフォーマンスを実現できました。何も問題が起きなかったことが、何よりのメリットです
豊田自動織機は、豊田佐吉が発明したG型自動織機の製造・販売を目的に、1926年に設立された歴史のある会社で、現在、繊維機械、自動車(車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサほか)、産業車両、エレクトロニクス、物流など、幅広い事業を展開している。その中でもフォークリフト、カーエアコン用コンプレッサ、エアジェット織機では世界シェアNo.1となっており、フォークリフト国内販売台数は51年連続でトップを維持し続けている。
グローバル展開を積極的に進めているのも同社の大きな特徴だ。世界各地の連結子会社数は207社、5万人を超える従業員のうち、半数以上は海外で活躍している。同社に対する世界的な評価も高く、フォーチュン誌が発表する「世界で最も賞賛される企業2017」では、自動車部品分野の第3位に選ばれている。
グローバル展開の拡大に伴い必要になったのが、世界的に統合されたコミュニケーション基盤の確立である。「国内は日本製のツールを使っていたこともあり海外との連携が難しく、そのシステム自体も老朽化が進んでいました」と振り返るのは、株式会社 豊田自動織機 情報システム部システム企画第一室 第2グループ 主担当員の小室 信二氏。そこで、Office 365の導入を決定、そのためのプロジェクトを2016年3月にスタートするのである。
ここで大きな課題となったのが、Office 365へのアクセスで発生する膨大なトラフィックを、どのように処理するかだった。
「このプロジェクトでは国内従業員を対象にOffice 365を導入することになりましたが、それでもユーザ数は約12,000名に達しています」というのは、豊田自動織機のSIを手がける豊田ハイシステム株式会社の野萱 直之氏。そのセッション数を試算すると、既存のプロキシでは対応しきれないことがわかったと語る。そこで他社事例の調査やヒアリングを実施。どのような方法が最適なのかが模索されていった。
「当初はExpressRouteでOffice 365専用の回線を用意することも考えましたが、この方法は割高になる上、既存ネットワーク構成の変更が必要でした。また既存プロキシをリプレースする方法や、プロキシの数を増やしてスケールアウトする方法も考えましたが、これも莫大なコストがかかる上、短期間で実現するのも困難でした」。