F5 Blog

 
アーカイブ 記事を検索

マルチクラウド化の観点からF5 Agility Tokyo 2017を振り返る(後編)

 F5 Agility Tokyo 2017 のセッション資料を一挙公開!こちらよりダウンロード可能:https://f5agility.jp/

前回はマルチクラウド化の観点から、F5の基調講演、F5の取り組み、そしてSaaS導入によってマルチクラウド化することになった佐賀県庁の事例を紹介しました。今回はより意識的かつ戦略的にマルチクラウド化を進めている、サービスプロバイダーの事例を2件見ていきます。

その1つが、株式会社リクルートテクノロジーズで執行役員CTOを務める米谷 修氏が特別講演で紹介した、リクルートにおけるマルチクラウドへの取り組みです。

マルチクラウド化を戦略的に進めるリクルート


リクルートにおけるマルチクラウド化の取り組みを紹介する、株式会社リクルートテクノロジーズで執行役員CTOの米谷 修氏。

リクルートは「リクナビ」や「ゼクシィ」、「SUUMO」や「HOT PEPPER」等、数多くのサービスを提供していますが、これらのほとんどはリクルートテクノロジーズが提供するITインフラで支えられています。以前のITインフラは物理サーバで構成されており、4カ所のデータセンタに1400台のサーバが設置されるという「群雄割拠」の状態でしたが、2009年にプライベートクラウド「RAFTEL」を構築、これらを統合・仮想化しています。これによってインフラ提供に必要な期間を、6週間から2週間へと短縮。アプリケーションサービスとしてはF5製品を採用し、VIPRON約10台、BIG-IP約40台が導入されています。

2010年頃には「小さく、軽く」開発できるパブリッククラウドの利用が拡大し、セキュリティ対応や非機能要件の作り込み等で問題が発生。これを解決するため独自のパブリッククラウド「Rクラウド」の構築も行われています。

その後もさらに、リードタイムや堅牢性・安定性、運用性等へのニーズが多様化していきます。そこで新たなチャレンジとしてネットワークまで仮想化した「RAFTEL Fleet」を構築。比較的ITリテラシーの高い事業部向けにセルフサービス型のITインフラを提供することで事業の求める構築スピードを担保、リクルートテクノロジーズの手厚いサポートの元に提供されているスタンダード版のRAFTELを補完しています。

「リクルートの各種サービスの進化・成長の裏には、このようなネットインフラの進化が存在します」と米谷氏。そしてネットインフラが「群雄割拠」からRAFTELへと統合された後、RクラウドやRAFTEL Fleetも誕生することで、「マルチクラウド」へと進んできたと説明します。「この進化を促したのが仮想化技術です。これから向かう先は、あらゆるものがソフトウェアで定義される『Software Defined』の世界です」。

リクルートは1000以上のドメインを持つ大規模な事業者であり、マルチクラウドでも最先端を走っていると言えるでしょう。しかしマルチクラウドへの道に積極的に踏み込んでいるのは、リクルートだけではありません。株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の玉﨑 一廣氏が紹介した自社事例も、注目すべき内容だと言えます。

GDOはオンプレミスからAWSへと全面移行


GDOが実施したAWSへの全面移行について語る、株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の玉﨑 一廣氏。

GDOは「ゴルフで世界をつなぐ」をミッションに掲げ、ゴルフ用品のインターネット販売やゴルフ場の予約サービス、ゴルフファン向けメディアの発行等、ゴルフに特化したビジネスを展開している企業です。国内のゴルファーは約760万人だと言われていますが、同社のネットチャネルには月間平均で約550万人が訪問、リアルチャルのサービスも月間平均47万人が利用しています。

これらのビジネスを支える直近のIT基盤は2011年に構築され、100台近くの物理サーバの上で300を超える仮想マシンが動いていました。しかし仮想基盤として利用していた製品のサポートが2017年に終了するという発表があり、次期システムの検討が迫られたと、玉﨑氏は振り返ります。

「この時の選択肢としては、オンプレミス✕クラウドのハイブリッド構成とフルクラウドがありましたが、固定資産削減やストレージ容量上限からの解放、事業スピードへの追随、プロジェクト収支の可視化を実現するため、AWSを利用したフルクラウドを選択することになりました」と玉﨑氏。データベースやアプリケーションが動く仮想マシンはもちろんのこと、オンプレミスで活用していたBIG-IPも仮想アプライアンス化し、AWSへと移行することにしたと語ります。「このとき多くのベンダーが『AWSへ移行するなんて本気なのか?』と聞いてきました。しかし『EndOfServiceLife(EOSL)からの解放』を実現するには、フルクラウドしかないと判断したのです」。

BIG-IPもAWSへの移行対象とした理由は、大きく2つあると玉﨑氏は説明します。1つは、高いセキュリティを確保するにはBIG-IP ASMの機能が必要だと考えたこと。もう1つは、きめ細かい振り分け処理を行うために作成していた約2000行に上るiRulesコードを、そのまま使いたかったからだと言います。

GDOにおけるAWSへの移行は、2段階で進められました。第1段階では仮想マシン群をAWSへと移行し、BIG-IPはデータセンタ内で運用。第2段階でBIG-IPを仮想アプライアンス化し、AWSへと移行しています。「第2段階の移行は、一発で動くはずはないと思っていました。しかし実際のところ、ほとんど問題は発生しませんでした」(玉﨑氏)。

BIG-IPをマルチクラウドでも活用できることを実証

GDOのケースは最終的にAWSへと全面移行しているため、厳密に言えば「マルチクラウド」ではありませんが、一時的にはマルチクラウド構成を採ったことになります。またAWSでもオンプレミスと同様にBIG-IPを動かせることを実証したことは、マルチクラウドへの扉を大きく開く結果にもなりました。そのような意味で、非常に重要な事例だと言えます。

このようにマルチクラウド化へのアプローチには様々な形があることが見て取れます。そしてマルチクラウド化は決して特別なことではないこともわかります。

マルチクラウド環境でもオンプレミス環境と同様に、適切なアプリケーションサービスを実装できるようにすること。これがいかに重要なことなのかが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

変化の中にこそチャンスがある

さて、ここでいまいちど基調講演に戻り、このレポートを締めくくります。

マルチクラウドへのシフトはまだ始まったばかりですが「すでに85%の企業がマルチクラウドアーキテクチャに積極的です」とサンギータ・アナンドは語ります。そして一貫性のあるアプリケーションサービスの実現こそが、このような世界における「コモンライン」であり、アプリケーションの自由を保証する条件になると述べています。

その一方でフランソワ・ロコー=ドノは「変化の中にこそチャンスがあります。そしてその変化を率いていくのはあなた自身なのです」と語っています。


基調講演で「変化の中にこそチャンスがあります。そしてその変化を率いていくのはあなた自身なのです」と語る、F5 Networks プレジデント兼CEOのフランソワ・ロコー=ドノ。

そう、この変化の主役は、他の誰でもない、あなた自身なのです。

なお「F5 Agility Tokyo 2017」の各セッションのプレゼンテーション資料は、以下のURLで公開されています。ここで取り上げたもの以外にも数多くのセッションがありますので、ぜひ一読されることをお勧めします。

URL; https://f5agility.jp/

Tags:
お問い合わせ