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マルチクラウド化の観点からF5 Agility Tokyo 2017を振り返る(前編)

 F5 Agility Tokyo 2017 のセッション資料を一挙公開!こちらよりダウンロード可能:https://f5agility.jp/

マルチクラウドの世界で、アプリケーションのコントロールをどのように実現していくか。これが現在、大きな課題になりつつあります。今後デジタル変革が進んでいけば、その重要性はさらに高くなっていくでしょう。インターネット経由で最適なユーザー体験を提供するには、最適なアプリケーション配置が不可欠になるからです。

そこで今回は、マルチクラウドへのシフトという観点から、2017年6月14日に開催された「F5 Agility Tokyo 2017」のセッションを振り返ります。まずはゼネラルセッションからです。

ここでは最初にF5ネットワークスジャパン代表執行役員社長の古舘が挨拶に立ち、F5ネットワークスのコーポレートストラテジーを紹介。


F5ネットワークスのコーポレートストラテジーを説明するF5ネットワークスジャパン代表執行役員社長の古舘正清

アプリケーション環境の変化に伴い顕在化しつつある新たな課題に対応することが、F5のミッションだと語りました。続いて登壇したF5 Networks プレジデント兼CEOのフランソワ・ロコー=ドノは「クラウド、セキュリティ、IoTが重要なポイントになります」と述べた上で、クラウド活用の本格化はまだこれからであり、近い将来には多様なクラウドを活用するのが当たり前になりますと指摘。


大きな変化に対応することの重要性を強調するF5 Networks プレジデント兼最高経営責任者(CEO) フランソワ・ロコー=ドノ

さらにF5 Networks シニアバイスプレジデントのサンギータ・アナンドも「デジタル変革はアプリケーションによって作られるものであり、マルチクラウドでどのようにアプリケーションサービスを提供するのかが、大きな問題になっていきます」と語っています。


基調講演に登壇しマルチクラウド対応の重要性を語る、F5 Networks シニアバイスプレジデントのサンギータ・アナンド。

アプリケーション環境の多様化に対するF5の取り組み

このような状況に対し「F5はどんなアプリケーションをいかなる環境に投入しても、一気通貫したL4-L7機能をご提供します」と語るのは、F5ネットワークジャパンでリージョナル・ソリューションズ・マーケティングマネージャを務める野崎 馨一郎。製品ポートフォリオをマルチクラウドに対応させるだけではなく、Silverlineのようにクラウドサービス型製品の提供も進めてきたと言います。「適切なアプリケーションが適切な場所にデプロイされ、ビジネスに貢献することこそが肝要なのだとF5は考えています」。


アプリケーション環境の多様化に対するF5の取り組みを語る、F5ネットワークジャパンの野崎 馨一郎

そのための取り組みは、昨年からさらに加速しています。例えばパブリッククラウド環境向けには、2016年後半に「Microsoft Azureユーティリティ課金対応」、2017年5月には「Google Cloud Platform対応」を行っており、クラウド間のインターコネクトを強化する「Application Connector」も提供を開始。プライベートクラウドでは「OpenStack向けのプライベートクラウドバンドル」の提供も行っています。これによってクラウドでのアプリケーションサービスの展開が、これまで以上に容易になっています。

しかし取り組みはこれだけにとどまりません。「クラウドへのシフトが進むことで、コンテナ技術を活用したアプリケーションのマイクロサービス化も広がっていくでしょう」とサンギータ・アナンドは基調講演で指摘。このような変化も、アプリケーション環境を多様化する要因になると言います。これに対しF5は2017年4月、コンテナ環境に対応した軽量なロードバランサである「Application Services Proxy」と、コンテナ化されたアプリケーションとコンテナ環境の管理ツール(オーケストレータ)を連携させる「Container Connector」の提供を開始しています。

これに加えて野崎は、IoTへの対応についても言及。2017年4月の最新版OSに於いてBIG-IPはIoTプロトコルの1つであるMQTTに対応した、業界初となる「IoTゲートウェイとして機能するADC」となったとし、その他のプロトコルにも市場ニーズに応じて順次展開していく予定だと言います。

F5はパートナーとの協業も積極的に展開

マルチクラウドに関するパートナーとの協業も、積極的に進められています。その1つの取組みを紹介したのが、エクイニクス・ジャパン株式会社の矢萩 陽一氏と、F5ネットワークスジャパンの坂上 健太郎によるテクニカルセッションです。


エクイニクス・ジャパン株式会社の矢萩 陽一氏と、F5ネットワークスジャパンの坂上 健太郎によるテクニカルセッション。

エクイニクスはマルチクラウドへのアクセスをセキュアな形で行う「Equinix Cloud Exchangeサービス」を提供していますが、「ここでF5のアプリケーションサービスを利用できるようにすることで、複数のクラウドに対する一貫したセキュリティポリシーの適用、可視化、集中管理、クラウド間のアプリケーションのポータビリティ向上、DDoS対策、SSLオフロード等を可能にしています」と矢萩氏は説明します。また坂上も「Equinix Cloud Exchangeのようなクラウド接続サービスとF5のソリューションを活用することで、それぞれのニーズに合わせた最適なハイブリッド設計を行えるようになります」と指摘します。

それでは実際に、マルチクラウド化はどのような形で進んでいるのでしょうか。実はSaaS活用を始めるだけでも、マルチクラウドへのシフトは簡単に始まってしまいます。そしてこれによって、ネットワークトラフィックに関する新たな問題が生じる可能性もあるのです。その事例として、ブレイクアウトセッションで紹介された佐賀県のケースを紹介しましょう。

Office 365導入で急増したメール同期のトラフィック

「佐賀県は平成20年(2008年)からテレワークに取り組んでおり、オフィス中心の働き方から、ICTを活用した人中心の働き方への変革を進めています」と語り始めたのは、佐賀県庁 情報企画監を務める川口 弘行氏。2016年1月に発生した大雪の際には、職員の10%超、400人を超える職員が、在宅やサテライト、モバイルからテレワークを行ったと振り返ります。2016年8月にはTCO削減を実現するため、オンプレミスだったメールシステムをMicrosoft Office 365へと移行。これによって新たな懸念が生じたのだと説明します。

その懸念とは、IMAPによるメール同期が大きなトラフィックを生み出し、他のインターネット利用に悪影響を与えるのではないかということでした。


佐賀県が実施したトラフィック分離について説明する、佐賀県庁 情報企画監の川口 弘行氏。

「最近ではクラウド活用による働き方改革に注目が集まっています。しかしそれを支えるネットワークインフラがどうあるべきかには、あまり注意が払われていないのではないでしょうか」(川口氏)。

この問題を解決するため、佐賀県はOffice 365へのトラフィックを、他のインターネットトラフィックと分離することに決定。ここで採用されたのが、テクマトリックスが提供する「Office365 トラフィック制御サービス」でした。これは、BIG-IP上のiAppsアプリケーションとして動く「o365 traffic controller」と、「テクマクラウド」を組み合わせたソリューション。Office 365は使用するFQDNやIPアドレスが頻繁に変化しますが、その情報をテクマクラウドで取得して解析・加工、それをo365 traffic controllerで受け取り設定を動的に変更することで、自動的に経路制御を行えるようにしています。

o365 traffic controllerが動くBIG-IPは佐賀県が契約したデータセンタに置かれており、佐賀県庁からのトラフィックを受け、Office 365向けとそれ以外とで別の経路を使って通信を行います。つまり佐賀県のシステムは、佐賀県庁のオンプレミスシステム、データセンタ、Offce 365、テクマクラウドが連携した、マルチクラウド構成なのです。

佐賀県はこのような経路制御によってトラフィックの問題を解決、2017年4月の人事異動の際も問題は発生しませんでした。「使い勝手を大きく変えないためクライアントにOutlookを採用した結果IMAPのメール同期の問題が生じましたが、WebブラウザでメールボックスにアクセスするOWA(Office Web Access)を採用していたら、問題は発生しなかったはずです」と川口氏。しかしOffice 365でOutlookを使用するケースは現在でも一般的であるため、このような対応策は他の組織や企業でも、必要になる可能性は高いと言えます。

佐賀県のようなケースは今後、SaaSを活用する多くの企業・組織で見られるようになるでしょう。その一方で、インターネット経由でサービスを提供する企業では、より意識的かつ戦略的にマルチクラウド化を推進する事例も見られます。次回はその代表的なケースを紹介します。

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