〜提言:アプリケーション・デリバリを検討する時に留意するべき10大項目〜
アプリケーション・デリバリと呼ばれる技術は25年以上前に誕生しました。ウェブに公開されるアプリケーションのスケーラビリティ確保の目的で導入された最初の負荷分散技術(ロード・バランサ)から、パフォーマンス問題に対処するウェブ高速化技術(アクセラレーション)、APIやAIゲートウェイに至るまで、アプリケーション・デリバリは常に、アプリケーションを配信し、スケーラビリティを確保し、セキュリティを担保する事に特化して提供され続けています。
クラウド・コンピューティング技術の台頭により、パブリック・クラウドで展開されるアプリケーションに特化したセキュリティのサービスを提供するクラウド事業者やSaaS型でアプリケーション・デリバリ技術を提供する、いわゆるADCaaSが登場し、セキュリティ・サービスが広く利用されるようになりました。
その後、OWASPが主導して、主要なセキュリティの検討事項を集約する「トップ10」リストが公開されるようになり、アプリケーション、API、そしてLLMのセキュリティを論じる際に、現在では業界のあらゆる場面で活用される標準的な項目になっているのはご存知の通りです。
一方、アプリケーションとAPIの高いスケーラビリティ・パフォーマンス・可用性を確保する目的で93%の企業が導入し活用しているアプリケーション・デリバリサービスに関しては、指針となるような検討項目リストは存在しませんでした。
あくまでも、今までは、の話ですが。
このように紐解いてみると、最初のロードバランサーを導入し、ADC(Application Delivery Controller)を確立し、インターネットの大部分のトラフィックを配信している弊社が、世界中のあらゆる企業の現場で課題となっている「アプリケーション・デリバリの課題トップ10」を提言する事こそ自然なのかも知れません。弊社はインターネット上で最も要求の厳しい環境でアプリケーションとAPIを配信し、保護する取り組みを20年以上の続けております。
DNSから配信ポリシーまで、トラフィック制御からトラフィックステアリングまで、オブザーバビリティからプログラマビリティまで、F5はユーザ企業が直面する配信に関する最重要課題を把握しているだけでなく、その解決方法を熟知しています。
そこで私たちは、選りすぐりのエンジニア、アーキテクト、フィールドエンジニアといったメンバーの経験を結集させ、アプリケーション・デリバリに関する課題のトップリストをこのたび作成しました。当然、世の中にはこの他にも課題は存在しますが、あらゆるアプリケーションとAPIの規模、パフォーマンス、可用性を脅かすトップ10はこのリストである、という点は全員が一致しました。
これらの課題は、単一環境だけでなく、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境にも当てはまります。ハイブリッド環境とマルチクラウド環境が絡むと大抵の課題は一層対応が苦労しますし、対策となるソリューションの実装も複雑になりがちです。ですが、アーキテクチャと運用に関わる課題である事も多く、パフォーマンス、スケール、可用性の問題の原因であることも多いのです。
Application Deliveryトップ10を明文化することで、ユーザ企業の現場で問題が顕在化する前に未然に防がれるようになるのが何よりの弊社の望みです。また、このリストは、生成AIのような新しいアプリケーションのデリバリにどのように対応するべきか、といったソリューションを模索する時のたたき台としてもご活用頂けるものと考えております。
ADC02 Lack of Fault Tolerance and Resiliance ›
ADC03 Incomplete Observability ›
ADC04 Insufficient Traffic Controls ›
ADC05 Unoptimized Traffic Steering ›
ADC06 Inability to Handle Latency ›
ADC07 Incompatible Delivery Policies ›
ADC08 Lack of Security and Regulatory Compliance ›